仮想通貨元年と言われた2017年以降、実に様々な事件やトラブルが仮想通貨業界で騒がれてきました。その中でも日本で最も騒がれたのは「CoincheckやZaifの流出事件」ではないでしょうか。
事件の詳細を確認していくと、共通して「ホットウォレット」という言葉が登場します。2018年初めに起こったCoincheckのNEM流出事件を機にホットウォレットとは何なのか、そしてその危険性などが周知されたはずでしたが、Zaifの事件でもホットウォレットにあった仮想通貨が盗まれることになってしまいました。
そこで改めて「ホットウォレットとは?」ということを皮切りに、ウォレットの種類とメリットデメリット、盗難などの被害に遭わないために最も安全な対策方法を解説させていただきます。
ホットウォレットとは
ウォレット(wallet)の元々の意味を日本語に訳すと「財布」です。日本においては電子マネーを管理できるアプリやソフトなどでも知られている用語ですが、仮想通貨についても同じく「保有する仮想通貨をしまっておく入れ物」という風に捉えると良いでしょう。
実は、仮想通貨のウォレットというのは仕組みにより種類がいくつかに分かれますが、それらを更に「ホットウォレット」と「コールドウォレット」の2種類に大別できます。簡単にご説明すると以下のようになります。
- ホットウォレット
- インターネット等の通信環境下で管理されているウォレット
- コールドウォレット
- オフライン環境で管理・保管されるウォレット
ちなみに、ウォレットを「ホットストレージ」「コールドストレージ」と呼ぶこともあります。両者の違いを説明するというだけであれば、おおよそ上記の説明で足りてしまいますが、今後仮想通貨と関わっていきたいと思われている方に関しては、もう少し詳しい仕組みを理解する必要があります。
ウォレット種別によるメリットデメリット
では、ホットウォレットとコールドウォレットの仕組みを詳しく理解するため、メリットデメリットも見てみましょう。
ホットウォレットのメリット | ホットウォレットのデメリット |
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・ネット接続のためいつでも出金ができる ・出金や仮想通貨決済が簡単にできる ・入力操作の工程が少なくスピーディに扱える |
・外部からのハッキングにより盗難リスクが高い ・取扱業者のサーバーエラーにより利用できなくなる可能性がある ・上記の理由により資産管理としては不向き |
コールドウォレットのメリット | コールドウォレットのデメリット |
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・秘密鍵さえ紛失しなければ外部ハッキングによる盗難が防げる ・取引業者の仕組みやサーバーに依存しない取引が可能 ・高額な資産を保管していてもある程度安心できる |
・秘密鍵の紛失や物理的な破損よる紛失リスクがある ・操作工程が多く難しい操作のためスピーディな出金等ができない ・上記の理由から高齢者などには不向き |
それぞれのメリットデメリットは互いのメリットデメリットの裏返しとも言えます。さて、ここまで理解すると今度は仮想通貨を保管するのに最も適した安全な方法を具体的に知りたくなるかと思います。続いて、より詳細なウォレットの種類を見てみましょう。
実は多いウォレットの種類
一般的な名称にはなりますが、仮想通貨のウォレットには以下のような種類があります。
- モバイルウォレット
- スマートフォンで保管する
- ソフトウェアウォレット
- パソコンのソフトに保管する
- Webウォレット
- インターネット上に保管する
- ハードウェアウォレット
- 専用端末に移動させて保管する
- 物理ウォレット
- 金属などに秘密鍵を刻印して保管する
- ペーパーウォレット
- 紙に秘密鍵を書いて保管する
- ブレインウォレット
- 自分で秘密鍵を記憶して保管する
上記のウォレットの種類を線引きするのだとすれば、「ハードウォレット」以降がコールドウォレットに該当します。理由はオンライン接続ができないものだからです。
ただ、ハードウェアウォレットはPCと接続して利用しますのでホットウォレットではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。その点を踏まえてCoincheckやZaifの事件のようにウォレットに保管した仮想通貨の盗難や紛失に遭わない為の対策をまとめてみましょう。
CoincheckやZaifの流出事件のような被害に遭わない為の対策
まず、ハードウェアウォレットが完全にコールドかというと実は微妙なところになります。仕組み上はネットワークから切り離す仕組みとなっているためコールドウォレットの扱いになりますが、接続したPC自体がハッキングされて受信用の鍵が改ざんされる可能性を指摘されたこともありましたし、そもそも非正規店から購入したハードウォレット自体に細工がされていたということもありました。
かといって、前章の物理ウォレット以降も絶対に安全とは言い切れません。そもそも物理的に保管しているので、保管したウォレットを破損、焼失、風化、紛失させてしまうと、その時点で仮想通貨は無くなります。よって「仮想通貨を絶対安全に保管する方法はないため、利用目的や仮想通貨を保有する目的により保管方法を対策する必要がある」という結論になるのです。
では、最後にホットウォレット・コールドウォレット共に、仮想通貨を失わない為の対策をまとめてみましょう。
ホットウォレット | コールドウォレット |
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・一時的な決済や出金の時以外は仮想通貨を預けない ・預ける際は少額を心がける ・仮想通貨を購入したらすぐに専用ウォレットに移動させる |
・定期的なメンテナンスや稼働チェックを行う ・不必要にオンライン接続をしない ・紛失防止のためウォレットはいくつも作らない ・ウォレット自体を分散させる |
最後の「ウォレットはいくつも作らない」と「分散させる」に矛盾を感じるかもしれません。しかし、実際のところ仮想通貨には「どこに何を保管したか忘れるほどウォレットは持つべきではない」「かといって一つのウォレットに集約するのも危険」というジレンマが常にあるということは頭に入れておいた方が良いでしょう。
特に、ホットウォレットは「他人の財布」に預金するのと同義であり、買ったものをそのままお店に置いておくということでもあるということはシッカリ心に留め置きましょう。
まとめ
仮想通貨ブームの発祥であるビットコイン。元々は「ブロックチェーン(分散型取引台帳)」という中央集権に依存せず改ざんに強い仕組みが注目されて今に至ったはずです。皮肉なことに、分散するというメリットをよそ目に仮想通貨取引所のサーバーという中央集権下に仮想通貨を置きっぱなしにするリスクを負うなら「わざわざ仮想通貨を買わなくても良いのでは?」という結論に至ってしまいます。
つまり、わざわざ不正アクセスに弱い銀行口座にお金を置いていることと変わらないのです。法定通貨と仮想通貨では投機性における違いはあるものの、仮想通貨ならではの仕組みを理解し、自己責任において管理していくことが正しい仮想通貨との付き合い方と言えるのではないでしょうか。