先日、あのテザー社の疑惑が晴れたというニュースが流れ、多くの人の間で話題となりました。Twitterで「テザー」と検索すれば同じ記事が乱立する状態で、ちょっとしたお祭り騒ぎの様相です。
そんなニュースが流れたのが12月18日のことです。翌日には一瞬のうちに話が広まり、多くの方が「明るい話題だ!」と捉えているようです。
しかし、色々と調べてみると何やらニュースに対する信憑性を疑うことが多くあることが分かりました。様々な意見が飛び交う中、今回はテザー社の疑惑が晴れたというニュースの信ぴょう性を調べつつ、世間の反応などをご紹介したいと思います。
テザー疑惑と報道内容のポイント
テザーとは、1ドル=1USDT という固定レートで仮想通貨が交換できる、いわゆる「ステーブルコイン」の代表です。ステーブルコインを持っていれば法定通貨と同額で仮想通貨の取引ができるため、使い勝手が良いという理由から市場の30%がテザーによる取引だとも言われています。
時価総額も全体の6位という規模です。
しかし、昨年から「テザーは発行したUSDTと同じ量のドルを有していない」との疑惑が持たれるようになります。テザー社もそれを証明することを全くしていないため疑惑は深まるばかりで、もし疑惑が真実と分かれば市場に計り知れないインパクトを与えることになるため、仮想通貨の業界では常にこの問題が注目されてきました。
そして今回ブルームバーグが発表した声明は、テザー社が発行したUSDTと同額のドルを保有しているかどうかについて、独自の調査により保有が確認されたというもの。それは昨年2017年9月から今年2018年7月の期間における、テザー社の銀行取引の明細を改めて確認した結果だといいます。以下の一文からも具体的な額などが読み取れます。
「That totals $452.9 million. There were 435 million Tethers on Sept. 30, 2017.」
それは合計4億5,290万ドルです。2017年9月30日現在、4億3500万のテザーがありました。
■出典:Bloomberg
この一文は、プエルトリコのノーブル銀行、カナダのモントリオール銀行に預金があり、その合計が4億5290万ドルであることを言っており、そして4億3500万のテザーが市場に流通していたということを言っています。
なお、市場流通の額はCoinmarketcapにて確認しているとの文言や、何らかの取引でテザー社が660万ドルの利子を受け取っていたという文言も見受けられます。
一部で見られる批判的な意見
今回のテザー社の疑惑解消の報道ですが、この話題が広まったのは一つのメディアが公表した以下の記事がキッカケです。
■出典:COINTELEGRAPH「仮想通貨テザーは十分なドル準備金を持っている」=ブルームバーグ報道
記事内では、ブルームバーグの声明からテザー社が発行済USDTと同額のドルを保有していることが分かり、銀行口座にある法定通貨は発行済USDT以上であると述べています。
このニュースは主にTwitterで拡散され、仮想通貨のファン達に瞬く間に広められることになりました。しかし、一部では以下のような批判的な記事もあるとのこと。
「While the report provides a measure of insight into Tether’s notoriously opaque operations, the current status of the company’s finances remains a mystery.」
レポートではテザー社の不透明な取引(市場操作)に関しては触れておらず謎のままである。
「
The report only shows that Tether Ltd. has transferred USD and received USDT.」
単にテザー社がUSDTとドルの交換を行った(「金額が一致した」とも)というだけのことを示している。
つまり、今回のブルームバーグによる「テザー社のドル保有額が確認できた」という声明は、あくまで独自の調査であり、もう一つの問題となっているテザー社とBitfinexの間での市場操作に関する疑惑が払拭できたわけではないという事も言えるのです。
市場操作は否定されていない
そもそも、今年1月にはCFTC(米商品先物取引委員会)がテザー社とBitfinexに召喚状に送ったとされています。詳しい内容は明かされていませんが、やはり市場操作に関する調査が目的だったのことです。そして今年11月には米司法省も市場操作に関して操作を開始しています。
正直なところ、政府機関からもここまで疑いを持たれていながら「シロだった」という結果はないだろうと考えられますが、どちらにしても米ドルとUSDTの発行数が一致していたとしても、それが市場操作をしていなかったという証拠にはなりません。ブルームバーグも現金とUSDTの流れは発表したものの、それが疑惑を完全に解消するものなのかというと疑問が残るところです。
更に、ブルームバーグの記事を仮想通貨ファンがなぜ信用しているのかは分かりませんが、トレーダーの間ではブルームバーグの報道は誤報が多いことで有名です。「ブルームバーグ 誤報」と検索すると、過去に誤報によるトラブルを何度も起こしていることが分かります。こういったことを考えると、今回の報道は信憑性に欠けるものと言えるかもしれません。
声明に対する巷の反応
では、今回の件に関して仮想通貨ファンの間ではどのように捉えられているのでしょうか。Twitterで見られた発言と特に気になるツイートをご紹介します。
テザーが白だったとか
言うけどどうせ2ヶ月後には
黒になって4ヶ月後には白になるんでしょ?
(^ω^)— LOSER(骨やで) (@LOSER76456304) December 18, 2018
とりあえず怪しい物には蓋で悪いけどテザーには退場してもらった方が界隈のためだと思う。
— ♨️ りっぷる課長 ♨️ (@shakurefubuki) December 18, 2018
テザーがシロというブルームバーグの現段階の報道を額面通りに受け取っていいものか非常に悩ましい。USTDネタは今のビットコインの信ぴょう性の肝だけど、それにしちゃ反応が薄い。一昨日のうちに大口に漏れてたとしてもそれでも薄い。本当にピカピカの真っ白なら暴落全戻しくらいの話。悩ましい。#BTC
— ホワイトっつうAV監督 (旅人) (@hero_herw) December 18, 2018
#ブルームバーグ
『大手メディアからテザーの証拠金を確認できたと報道された』
好材料には違いない‼️米司法省の調査は続行中
⬇︎
テザーへの不安が
完全に払拭された状況とは言い切れず
⬇︎
警戒態勢は続く!#仮想通貨 #BTC #NEM #ガチホhttps://t.co/ngXZLJdSMn— nemhome | Nem. LoyalCoin (@nemhome) December 19, 2018
どもども!
暴落の大きな要因となっていたコインチェックやテザー社ですが、同時期にポジティブな情報が飛び出してくるというのも偶然なのか出来レースなのかわかりませんがどちらにせよ懸念事項が一つ一つ解決されるというのは市場にとって大きなプラスなのは間違いありません。— きくちゃん@LOVE&PEACEトレーダー (@lovepeace22222) December 21, 2018
色々な意見がありますが、特に気になるのは以下のツイート。
「テザー疑惑が晴れた!」みたいな話が出ているけど、記事には”Bank statements reviewed by Bloomberg News suggest those fears may be unfounded”とありsuggestとmayが使われてることから断定表現でなくかなり弱気な推察だの。 https://t.co/9pg1HWllo9
— 502おじさん☆仮想通貨Z502 (@502ojisan) December 18, 2018
確かに、「suggest=っぽい、示唆する」「may=たぶん、だろう」という意味が含まれます。記事タイトルも…「テザーが持っていると約束した10億を示唆する謎の糸口」と解釈することができます。
どちらにせよ、報道が本物であれば大口による取引が今のような小さな反発ではなく、これまでに下げ続けてきた相場を全て戻すほどのインパクトがあってもおかしくありません。
そう考えると、意外と市場関係者はこの報道を冷静に受け止め、「まだ疑惑は晴れていない」と判断しているのかもしれません。
まとめ
テザー社の疑惑については、以前こちらの記事でもご紹介しました。
皮肉にも、テザー社がCFTCの調査を受けることになったのが、ちょうど日本でも仮想通貨が沸いた1月のことでした。その後、徐々にテザー問題が認識されるようになり、何かある度にテザーを疑う声が出る状況です。
どちらにしても、今は「噂で買って事実で売れ」という格言に従うべき状況なのかもしれません。疑惑が本当か嘘かは、大口取引を行う市場関係者のほうがよほど詳しいはずなのですから。