これまで多くの企業が仮想通貨事業に乗り出す方針を打ち出してきましたが、同じく参入を表明していた「マネーフォワード」が、ユーザビリティ(使い勝手)の優れたサービスに大いに期待できる具体的なサービス内容を公表しました。
不思議なことに仮想通貨ファンの間ではあまり話題になっていませんが、マネーフォワードが予定しているサービスや将来的な事業展開の内容を見ると、恐らく2019年以降、最も仮想通貨業界で話題になると考えられるものになっています。
今回は、2019年に最も注目したいマネーフォワードの仮想通貨事業とはどんなものなのか、報道発表からまとめた内容をご紹介します。
マネーフォワードの市場規模
マネーフォワードは「SaaS」と呼ばれる会計に特化したクラウド型のサービスを提供する企業です。家計簿アプリをリリースして一躍有名となりましたが、市場規模はどのくらいあるのでしょうか。
公表されている有価証券報告書より、過去の時価総額の推移を見てみましょう。
2018/10/15 | 平成30年第3四半期 | 931億8345万円 |
2018/7/17 | 平成30年第2四半期 | 1082億3171万円 |
2018/4/16 | 平成30年第1四半期 | 768億8581万円 |
2018/2/27 | 平成29年第4四半期 | 901億1554万円 |
2017/10/13 | 平成29年第3四半期 | 514億8465万円 |
マザーズに上場したのが昨年の10月。驚くことに500億の時価総額が1年もしない間に1000億を超えています。
本記事の執筆時点では株価下落に伴い600億円台ですが、純資産額も100億円から一気に360億円まで拡大していますので、成長著しい企業と言えるでしょう。
■出典:株式会社マネーフォワード「財務ハイライト」
https://corp.moneyforward.com/ir/finance/
会計ソフトの老舗である「弥生」には及びませんが、会計SaaSの中ではマネーフォワードはシェア率も高く、2016年から2017年にかけて「freee」のシェア率を超える結果となっています。
■出典:株式会社MM総研「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2017年12月末)」
https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=281
マネーフォワードのこれまでのリリース内容
今回のテーマであるマネーフォワードが仮想通貨業界へ進出するという話題は、実は今年5月には既にリリースされていたものでした。
ただ、詳細な情報は少なかったため、これまでに仮想通貨事業を始めると表明していた他の企業と同じように、仮想通貨ファンの間では「先々に活躍しそうな企業」というボンヤリしたイメージで捉えられていたのみでした。
では、その時のリリース情報を一覧で見てみましょう。
- (2018年5月23日のリリース情報)
- マネーフォワードの100%子会社「マネーフォワードフィナンシャル株式会社」を設立
- 同年夏に仮想通貨に関するメディアの立ち上げを行う
- 2018年内に仮想通貨交換所を開設する
- 仮想通貨の送金や決済をするためのプラットホームを構築する
- 既存の提携先である「Coincheck」「Zaif」の他にも、約20の国内外仮想通貨交換所との連携を目指す
- MFクラウド確定申告に連携して損益計算・確定申告の円滑化をサポートする
■出典:マネーフォワードプレスリリース
https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20180523-mf-press01/
https://corp.moneyforward.com/news/release/corp/20180523-mf-press/
前述の通り、情報は上記がメインでしたので市場関係者が大いに湧いたということもありませんでした。
しかし、つい先日行われたマネーフォワードフィナンシャル代表の神田潤一氏によるメディア向けの説明会では、2019年の仮想通貨業界が活気づくと感じさせる非常に興味深い内容が発表されたのです。
マネーフォワードフィナンシャルが発表したサービス内容
今回発表された内容は、公式サイトでは公表されていません。そこで、各報道から集めたマネーフォワードフィナンシャル代表の神田潤一氏が語るサービス内容や今後の展望をご紹介します。
- 仮想通貨交換所の開始は2019年春頃を予定
- 基本は「決済・送金のプラットホーム」を念頭においている
- 既に国内外の仮想通貨取引を一元管理できるようにして損益計算や確定申告のサポートが行っている
- 仮想通貨取引は「Money Forward ME」というサービスにリンクされる予定
- 将来的には海外取引所を設立して国際間の決済サービスを提供
- それにより仮想通貨さえあれば海外でも生活できるようにする
- FXは考えておらず、あくまで金融ツールとしての位置づけ
まず特徴的なのは、これまでのように価格変動による取引をメインとしたものではなく、あくまで決済や送金という「通貨」としての位置づけで仮想通貨交換所を運営する点。これは今までの仮想通貨取引所とは一線を画すといって良いでしょう。
また、仮想通貨取引での売買益や仮想通貨による商品の決済などで生じる損益計算や確定申告も、既存のシステムと連携させることで楽に行えるするとのこと。
更に、他の取引所と明らかに違う方向性であることを表しているのが「FX取引は考えていない」ということ。実際に神田潤一氏も「(証拠金取引は)違うと思う。」と語っており、あくまで決済手段のプラットホームとしてサービス展開するという方向性で間違いないようです。
2019年春ローンチ予定。仮想通貨ユーザーが増える可能性
さて、他の取引所とは明らかに違う方向性であることが分かったマネーフォワードフィナンシャルの仮想通貨事業。2018年8月頃から金融庁への申請を行っているとのことで、2019年1~3月には登録を済ませて事業を開始したいと語られたようです。
では、マネーフォワードフィナンシャルが始める仮想通貨事業でどんなことに期待できるのでしょうか。
仮想通貨決済プラットフォームの提供
まず仮想通貨の決済手段としてのプラットホームが提供されることで、仮想通貨決済に対応した店舗やサービスがこれまでより増えることが予想されます。
但し、仮想通貨決済を可能とする店舗やサービスを増やすには、その導入方法やコストが最重要課題。ここは本当に仮想通貨ユーザーを増やすために非常に大事な部分ですので、マネーフォワードフィナンシャルがどのようなサービスを提供するのかが注目されます。
損益通算や確定申告が楽になる
そして、手間がかかる上に分かりづらかった損益計算や確定申告が、マネーフォワードの既存サービスと連携することで楽になります。
これにより、税金の問題を考えるのが面倒という理由で仮想通貨を敬遠していたユーザーを再度市場へ参入させる機会を与えるきっかけにもなるでしょう。
クロスボーダー決済が可能になる
極めつけは、海外取引所の設立によりクロスボーダー決済まで可能にしようという目標があること。クロスボーダー決済とは海外に行っても持っている仮想通貨で買い物などができるということです。
つまり、円やドル、ユーロなどの法定通貨との為替交換を必要としないため、手数料を非常に安く抑えられるという利点があるのです。マネーフォワードの取引所は明らかに他の取引所とは違い、実用性に特化したサービスを展開するのだということがよく分かります。
これらは仮想通貨業界でも必要なインフラという認識をされており、仮想通貨をよく知る人ほどこういったサービスが開始されることが、以下に重要であるかはお分かりいただけるかと思います。
まとめ
率直な感想として、マネーフォワードが行おうとしている事業こそ今の仮想通貨業界で必要だったものです。ただ一つ筆者の希望を言うのであれば、やはりNEMの取扱いも積極的に検討すべきではないでしょうか。
先日、以下の記事でもご紹介した通り、NEMは現在、日本で最も仮想通貨決済で利用されていると言っても過言ではありません。
ユーザビリティという点で技術者にもユーザーにもメリットがあることを考えると、今後の仮想通貨事業でNEMを取り扱うことは、少なくとも国内市場において重要な位置にあるはずなのです。
少々主観が入りましたが、どちらにしてもマネーフォワードの事業には、大きな将来性を感じさせます。これは決して過剰な期待ではなく、第三のIT革命である仮想通貨を身近な存在にするため、いずれ通らなければ行けない道なのです。